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本の感想

ラジオ・エチオピア

蓮見圭一著「ラジオ・エチオピア」を読んだ。
恋愛小説・・ぶっちゃけ不倫恋愛小説。
だいたい恋愛小説とか恋愛映画って、どうしてお互いが好きになっていったのかとか、どんな付き合い方をしたとか、そういう具体的なお話が多いと思う。
ましてや不倫となればなおさらで、いかにして二人が不倫関係になったのかとか、その関係の終焉あるいは結実の過程を描くよねえ、普通。
まあそういうところがお話しにしやすいだろうし、みんな興味あるだろうし。
ところが、このラジオ・エチオピア。
そういう理由とかからくりとか過程とか一切無し。もっと言うと主人公の感情すらほとんど描写されない。ひたすら愛人女性がどんだけ主人公を好きなのかってことがビシビシ描かれてる。
主に女性からのメールという形で想いが書いてあるんだけど、これがまるで自分宛のメールみたいに思えてきてだんだん気味が悪くなってくるのね。
多分、愛人女性が主人公をなんでここまで好きなのか理由が分からないのが居心地を悪くさせるんだと思う。
なにしろ物語が始まって(二人が出逢って)5ページくらいでもう好きなの。すんごく。
その後もただひたすらスースキスースキスー。
やっぱり理由が分からんとなんかやましい魂胆でもあるんじゃないかと思うじゃないですか。
まあ僕が勘ぐり過ぎだったようですが。
ちなみに時代設定は2002年日韓ワールドカップ開催期間中ということになってます。微妙にワールドカップも関係ないとも言えないのでサッカー好きの人は読む価値があるかもしれなくもない。
僕はそういうふれこみで会社の先輩から借りました。
ちょっくら文句言いたい気分ですが。

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陽気なギャングが地球を回す

伊坂幸太郎著「陽気なギャングが地球を回す」を読んだ。
これまで読んだ、グラスホッパーやラッシュライフと比べると物語のトリックとかどんでん返しっぷりはやや物足りないんだけど、テンポ良いスピーディーな展開に先が気になってどんどん読んじゃう。
まだ伊坂作品を読んで3作目だけど、この作品で初めて主人公(達)に好感を持った。応援したくなる人達。タイトルの通り主人公はギャング団なわけだけども、凶悪犯ではなくてルパン3世みたいなスマートで面白いギャング団。
緻密に練られた計画を立ててエレガントに強盗するのがカッコいい。
金に困って強盗するのではなく、ある種刺激を求めて強盗してるんじゃないか?
ギャング団の一人の響野の口ぐせの
「ロマンはどこだ?」
にもあるように、この主人公4人にとって強盗はロマンなんだな。
金よりもロマンを求める銀行強盗。カッコいいねえ。
損得勘定ばっかりで動くでしょ、最近の世の中。安いとか速いとか、効率がいいとか。
目的さえ達成出来ればなんでもイイみたいな。
そりゃーそういうのも大事だけども、もっとカッコイイとか美しいとかワクワクするとか、なんか上手く言えないけど、そーいうの大事にしたいよね。

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椿山課長の七日間

浅田次郎著「椿山課長の七日間」を読んだ。
前に読んだ村上春樹のアフターダークがあまりに難解で???って感じだったので、とにかくシンプルに泣きたいと思って浅田次郎。浅田次郎は文句無しに分かりやすく泣かせてくれる。
と思ってたんだけどね、あまりにひねりがなくて泣けなかったなー。残念。村上春樹の後だったから単純に感じたんだろうか??
あらすじは働き盛りのサラリーマンが過労死して、死後の世界から現世に舞い戻って自分の人生を振り返るってお話。いきなり主人公が死んじゃうけども、死後の世界がコミカルに描かれているから暗い雰囲気はない。ザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」(おらは死んじまっただーってやつね)みたいな調子。
主人公の他に事故で亡くなった男の子とヤクザの親分も自分の人生を振り返るわけだけど、イマイチ共感ができなかった。
なにより納得出来ないのは、どんな凶悪犯でも「反省ボタン」を押すだけで天国へ行けるってこと。それでも中には地獄に行く人も行くわけなんだけど、それがまた理不尽で。
まああんまり詳しく書くとネタバレになっちゃうので、その辺りは小説を読んでみてください。
面白くないって言いながらも、読んでみてくれって言うのはめちゃくちゃですなあ。

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アフターダーク

村上春樹著「アフターダーク」を読んだ。
村上春樹作品は高校の課題図書でノルウェイの森を読んで以来。当時の僕が青かったせいかノルウェイの森は単なるエロ小説としか思えずに、他には特に感じるものもなかった。
なもんで今まで村上春樹の本は読まなかったんだけど、世の中にはハルキストとよばれる熱狂的なファンがいっぱいいるそうだから、ノルウェイの森を読んだ時の倍の年齢になった今、村上春樹に再挑戦しようかと。
というか本当のところは単に会社の人が貸してくれただけなんだけども。
で読んでみたけども、一言で言えば意味不明でした。いや書いてあることは別に難しくないんだけど、読み終わった後に・・・それが何か?って感じなんだよね。
物語が展開していきそうな伏線は山ほど出てくるのに、何一つ展開せずに終わる。
登場人物も全くと言っていいほどキャラがたってない。無色透明無味無臭な人間がしゃべってるだけ。
あと読者の視点?というものがあったのも最後までなじめずに気持ち悪かった。
登場人物を見つめている視点としての「我々」っていうのが出てくるの。意味分かりますか?分からないでしょ。だって書いてる僕も全然分かんないもの。
ここから何か感じなさいっていうのはちょっと乱暴なんじゃないかな?何を感じるかは読者次第ってよく言うけど、あまりにも放置しすぎでしょ。
とりあえずスゲーつまらなかったです。これを面白い!っていう人の意見が聞きたい。この本の良さを誰か教えてください。村上春樹の本ってみんなこんな感じなんでしょうか?

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ボロボロになった人へ

リリー・フランキー初の短編小説集「ボロボロになった人へ」を読んだ。
リリー・フランキーの文章と聞いてまず思い浮かぶのは一世を風靡した「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」。あとはエッセイ(とりわけエロいやつ)?
東京タワーは悶絶号泣クラスに感動したけど小説といってもほとんど自伝だったから、本当の意味での小説はどうなんだろ??ってやや不安ほぼ期待で買ってみた。
読んでみるとリリー・フランキー節炸裂。笑えてエロくてちょっと傷負ってて。
ブッ飛んだ設定のお話もあったりして、星新一のSFショートショートに通じるものもあるかも。
小説っていうよりギャグみたいな感じ。
それでもさすがにリリーさんだけあって、結構考えさせられるとこもあり。
法律や倫理といった社会の常識を茶化しつつも、自分の本質を見失うまいとして生きる人達を描いてる。
だからゲラゲラ笑った後に、ふと考えさせられる。
当たり前だと思ってる社会常識は本当は重要じゃなことじゃないんだよと。大麻栽培、売春、死刑制度、戦争・・色んなタブーに挑んでる。もっとも挑んでるっていっても、そこはリリー・フランキーですから。クスクス笑いながら竹やり持ってぶらぶら歩いてく感じです。
本当に大事なのはもがいてる自分なんだと。世間体とか社会とか色んなフィルターで自分自身でも分からなくなっちゃってる本当の自分に素直になろうよと。そうおっしゃってるんじゃないですかね、リリーさんは。クスクス笑いながら。

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グラスホッパー

大人気の伊坂幸太郎。ラッシュライフに続いてグラスホッパーを読んでみました。
殺された妻の復讐に燃える主人公、ナイフ使いの殺し屋、自殺屋の3人の視点で物語が進む。主人公以外は完全な裏の世界の人間。主人公も復讐のために裏の世界に潜り込む。この3人以外にも脇を固めるのが押し屋、毒殺専門の殺し屋等々悪人ばっかり。
それでも物語をしばらく読んでいくとそんな異常な世界にもすっかり慣れて、それぞれのキャラクターに感情移入できるようになる。僕はナイフの殺し屋「蝉」が気に入ったな。
打算とかかけひきとか全くなし。後先も考えずに突っ走る。純粋と言えば純粋。ただしやってることは殺人なんだけども。自分がやってることが正しいのか間違ってるのかなんて迷わずに突き進むのはカッコいいね。
僕なんてサラリーマンやってるだけなのに迷いっ放しだ。迷ってないで突き進んでみれば良いってことは分かってるのに。
伊坂作品を読んだのはラッシュライフに続いて2作目だけど、ラッシュライフ同様に続きが気になるテンポが良い展開とトリックはさすが。やっぱり細かいディティールは突っ込みどころが満載だけど、そんなの気にならないくらい面白い。しばらくは伊坂幸太郎作品にはまってみよう。

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水曜の朝、午前三時

蓮見圭一著「水曜の朝、午前三時」を読んだ。会社の先輩が「間違って」貸してくれた本だ。どう間違ったかというと、この本を借りた時に
「日韓ワールドカップのからくりが絡む物語だからサッカー好きの君向きの本だ」
って言われたのね。
で、読んでみると年代設定が1970年前後で、ワールドカップのワの字も出てこなくて、イベントと言えば大阪万博の話ばっかり。それでも途中で微妙に在日朝鮮人の話になってきたから、劇的に話が2002年に飛んで日韓W杯の話になるのかと思ったらちっともかすることなくあっけなく終わった。全くもって単純に先輩が貸した本を間違えただけだった・・・。
最初から最後まで出てくるはずのない日韓W杯のからくりを楽しみに待っていただけに、主人公の過去の秘密とか、ロマンスとか、もうどーでも良くて。
実際次第に明らかになっていく秘密というのも予想の域を出ない感じだったと思う。
全体の物語が主人公が娘に向けて書いた手紙によって語られるという手法も宮本輝の錦繍のパクリじゃねーかとか斜に構えちゃったしね。
いやそれもこれも先輩が僕にW杯をちらつかせたせいだと思う。
もっとフラットな状態で読みたかった・・・。
女性が読んだら結構面白いんだと思いますよ。無理矢理のフォローですが。
それにしても日韓ワールドカップのからくりとやらのお話は借りられるんだろうか。それとも最初っからそんな本ないんだろうか。

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ハンニバル(下)

ハンニバル(下)読了。
読み終わってホントにびっくり。なにがびっくりってラストが映画とじぇんじぇん違うのね。こんなに違っちゃっていいのか?ってくらい。よく原作者からクレーム入らなかったな。
小説と映画がこんだけ違うとなると羊たちの沈黙とかレッド・ドラゴンも小説と映画は別のストーリーになってるんだろうか?ハンニバル・ライジングは比較的同じ流れだったけど。
ハンニバルは率直に言って映画の終わり方の方が好きだけど、殺戮シーンのエグさは小説の方が上。
ハンニバル・レクター博士の人物像も丁寧に描かれていて、いかにして博士が怪物になっていったかという「ハンニバル・ライジング」の骨子とも言うべき過去も明らかにされる。
妹ミーシャの悲しい過去に悩まされるレクター博士は少し人間味を感じさせる。とはいえやっぱりレクター博士は人間離れした存在なわけで。
なかでもレクター博士の「記憶の宮殿」は実に素晴らしい。つーか羨ましい。僕も欲しい。

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ハンニバル(上)

ハンニバル(上)読了。まだ上巻だから読了はおかしいか。
映画は見たことあったけど、会社の貸し出し文庫に置いてあったので読んでみました。ハンニバル・レクターシリーズ3作目。前2作ではレクター博士は脇役にすぎなかったけど、予想外(?)に人気者になったので、満を持して堂々の主役として登場。そのタイトルもずばり「ハンニバル」ときた。
ところがハンニバルさんなかなか出てこない。クラリス・スターリングばっかり。でようやく半分過ぎたあたりでハンニバル・レクター登場。ところが最初は世を忍ぶ仮の姿フェル博士として登場する。フェル博士は知識も教養も兼ね備えたとっても紳士なお人。怪物とか殺人鬼とは対局にある高貴な雰囲気を持っていて、学者さん達相手に講演すれば拍手喝采が起こっちゃうくらい。
この知的なところがレクター博士の人気の所以なわけだ。ルパン3世が愉快な人柄で愛されるようにレクター博士はその紳士っぷりで人々を魅了する。
もちろんその紳士的なふるまいは、ハンニバルの凶暴な一面を際立たせるための演出でもあるわけで。上巻の残り数十ページでの変貌ぶりが凄まじい。パッツィ(ハンニバルを追う刑事)に正体を見破られると紳士(フェル博士)から一瞬にして悪魔(ハンニバル)に変身。その殺戮シーンは読んでて気持ち悪くなります。
映画より全然凄いです。でも映画ももう一度観たくなりました。下巻楽しみ。

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ラッシュライフ

会社の後輩から本を借りて読んだ。
伊坂幸太郎著「ラッシュライフ」。
どんなジャンルの小説かも聞かずに読んだのでなかなかスリリングだった。
ミステリーというか仕掛けたっぷりの謎めいた小説なんだけど、いちいち仕掛けに騙されたわ。途中でバラバラ死体がくっついて蘇ったかと思わせる仕掛けのあたりでは、ゾンビ系のホラー小説に展開していくのかと思うくらいみごとにひっかかった。
テンポの良さと物語の大味さが映画っぽい。タランティーノfeauturing宮藤官九郎って感じだ。ゾンビ方向に転がりかけた時はフロムダスク・ティル・ドーンみたいにメチャクチャになるんじゃないかと心配したけど、結果的にはパルプ・フィクションだったので安心。
多少細かい部分が雑な感じはするけど、そんな細かいところは目をつぶって、充分楽しめる小説だった。
伊坂作品もっと借りよ。